本棚を整理していて「男と女の部屋」を見つけた。コミックはさほど読まないが、たとえばガロ系の作家は割と好きで何冊か持っている。上村一夫といえば「同棲時代」が代表作だと思うが、それは持っていないのに「マリア」(上下)とこの本はなぜか持っている。買った時(いつだったか忘れたが、発行は2007年)以来だからずいぶん久しぶりに読んだ。
*
上村作品とえば、眉の細い、暗い目をした美人をイメージする。それぞれ人にはあまり言えない過去を持ち、ある時は男にすがっては捨てられ、ある時は居直って見栄を張り、罪を犯したり逃げたり・・・それでいてどこか凛とした魅力がある女が多く登場する。
そして、やはり「昭和」そのものであるような気がする。昨今「昭和な」等々となつかしき昭和をふり返る番組やらなにやらが目に付くが、上村一夫の作品には昭和のど真ん中を感じさせるものがあると思う。そして、阿久悠。この希代の作詞家もまた「昭和」の作詞家であり、多くの傑作を残している。
上村一夫と阿久悠は若いころからの知りあいらしい。巻末の随想「我が友 阿久悠」によると、上村がフリーのイラストレーターとして仕事をしていたころ、阿久悠から連絡があったという。知らない名前なので戸惑ったらしいが、実は昔同じ会社で働いていたことがあった深田という人が阿久悠であることを知ったとのことだ。久しぶりの再会を経て誕生したのがこの「男と恩なの部屋」ということになろうか。
*
「男と女の部屋」は十一の話からなる。第一話「月見草の女」から第十一話「湖畔の女」まで様々な女が出てくるが、常に話の中に歌が挿入されている。「男と女の部屋」という歌で、上村一夫のファンであった山崎ハコが曲をつけて歌っており、今まで気づかなかったが付録としてCDが付いていた!
「男と女の部屋」 (詞:阿久悠 曲・歌:山崎ハコ)
見てはいけない 人並みの
夢を見るたび むなしさに
生きているのが いやになる
男と女の部屋の中
恋という字が にくらしい
そんなおいしい お話は
きいているだけ しゃくの種
男と女の部屋の中
情もないのに 抱かれて
情もないのに 世辞を云い
情もないのに すがりつく
男と女の部屋の中
昔々は 捨てました
明日もついでに 捨てました
今日という日が あるだけの
男と女の部屋の中
何がそもそも 間違いか
どこでこの道 迷ったか
気がつく時が 遅すぎた
男と女の部屋の中
うーん、やっぱり「昭和」だなぁ!実際に曲を聴いてみたくてCDをMacのスロットに入れてみたけれど読み込めず。仕様が違うのだろうか。山崎ハコというと「暗い」というイメージしか持っておらずほとんど聞いたことがなかったのだが、これはちょっと聴きたいと思っていたのに・・・でも、動画がちゃんとあったので解決。うーん、やっぱり「昭和」!
*動画(音源)は、こちら。
*今日で9月も終わり。ああああああ〜!