日参している「馬とニャンコと男と女」で人懐こいキタキツネの話が出ていた。ひょっこり現れたキツネに近づいていっても逃げないという。なぜか。人(たいていは旅行者だろう)が車に乗っていてキツネの姿を発見し、写真を撮りたいがために餌で近くまで呼び寄せるということをしているうちに、人を恐れることよりも餌ほしさに寄ってくるようになったのではないか、とのことだ。それゆえ、車が通りかかると近づいてきて車に轢かれてしまったり、自力で餌を獲れずに飢え死にしてしまう。「馬とニャンコと・・・」の運営者かじやんは、野生動物に対して安易に餌をやってはいけないことを、多くの人に知ってもらいたいと書いていた。
全くその通りだと思う。単に珍しいから、かわいいから、といって安易に近づき、SNSにアップしたいからといって安易に写真を撮ろうとする・・・そういう何も考えない安易な人たちが多すぎると常日ごろから私も腹立たしく感じているのだ。
考えてみれば、観光客の車の窓から強引に中に入って菓子などを奪う猿も、もともとは観光客が安易に餌を与え、ラクして飢えをしのぐ術を学んだのだろう。似たような例は探せばけっこう出てくるに違いない。野生動物でなくても、たとえば動物園の動物に餌をやる人もかつては多かったようで、「餌を与えないでください」という看板をよく見かけた。より近くで見たいがためにやった安易な行動が、結果的に動物を傷つけることになるなどと思いもしない人たちがいるということだ。
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動物、とくに野生動物とは一定の距離感をもつのが重要だと思っている。何故なら、彼らには彼らの、私(人間)には私の立場があり生活があるからだ。相手が人間ではないから、人間より劣る動物だからという理由で彼らの領域にズカズカと入っていいとはとても思えぬ。彼らが存在するということをたいせつにしたいのであれば、遠くから見ているだけにしたいものだ。
よく、野良猫と仲良くなりたいけれどすぐに逃げられてしまうという話を聞く。あ、かわいい猫!おーい、仲良くしようよ!とやおら近づいていけば逃げるに決まっている。彼らは人間ではなく、身近にいる野生動物なのだ。野生動物は生きていくために用心深くなくてはならない。ちょっとした不注意も命取りになりかねない暮らしをしている。呼べば寄ってくるなら、彼らはもはや野良猫失格だろう。
かくいう私もよく見かける野良猫は常に気にしている。冬の寒さに耐えているだろうか、酷暑にばてていないだろうか、等々。普段よく見かける場所を通ればちょっと立ち止まって様子を見るが、いれば一安心して立ち去り、いなければ少し気にしつつ立ち去る。中には、人を見かけると近づいてくる猫もいるが、私はそのような猫こそ心配だ。野良猫は人懐こくなってはいけないのだ。いつ危害を及ぼそうとする人間が近づいてくるとも限らないのだから。
悩ましいのは、すでに人間馴れしている野良猫だ。地域猫活動をしている人など特定の人が餌をやっている場合はまだいい。そういう人たちは、責任感を持って世話をしていることが多いから。雨の日も雪の日も餌をやり、病気になれば獣医に連れて行き、避妊手術を自腹でやり・・・そういう人ならまだいいのだ。
そうではなく、気まぐれに何人かの人間が餌をやり、人に馴れてしまった猫が困っているとこちらも困る。余計な手出しはしたくないが、弱りきっている姿を見てしまうとどうにかしてやりたくなる。人馴れしていない野良猫は、身体が弱り死期を悟ると誰にも見えないところに消えてしまうことが多いが、人に馴れた野良猫は痩せ衰えた姿で突然現れたりするのだ。
今まで二匹、そんな猫たちと縁があった。一匹はなんとか飼い主が見つかったのでよかったのだが、もう一匹は飼い主を探すなどを考える前に死んでしまった。弱りきっていて獣医も手の施しようがなかったようだった。とてもかわいらしく人懐こい猫だったので誰かが保護して飼ってくれればいいなと思っているうちに姿を見せなくなり、数ヶ月して見かけたらもうボロボロだった。もっと早く見つけてやれれば・・・と今でも思う。
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話がそれてしまった(毎度のこと?)。つい先日、子供がヤマカガシに噛まれて重体になったというニュースがあった。公園で噛まれたとのことだが、たぶんつかまえようとしたのではないかと思う。ヤマカガシは毒蛇ではあるが、多くの野生動物がそうであるようにこちらから攻撃しなければ噛みつくなどということはしないと思う。噛まれた子の友人がヘビをリュックに入れて持ってきたとのことなので、しかけたのは子供たちの方だったのではないだろうか。これでヤマカガシが悪者になっては気の毒だ。
この件にしても、野生動物との距離のとりかたを知らぬ故のことだと思う。子供たちは好奇心いっぱいで何にでも近づきたがるものだし、それ自体は悪いことではない。しかし、毒性があるかもしれない動物に対しては、近づかぬよう大人たちがきちんと教えておいてくれないと。とはいうものの、安易に距離を縮めたり、かと思うとヒステリックに離れたり“適当”な距離感について考える大人も少ないのかもしれないわなぁ。
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7月も今日で終わり。ここ数日戻り梅雨とかで少し涼しかったが、これからまた猛暑酷暑が襲いかかってくる。台風も近づいてくるようだ。できるだけ暑苦しいことはやりたくないと思っているのに、動物のこととなるとついつい(^^;)