「きものじごく」に足を踏み入れて以来、つくづく思うことがある。昨秋行った帯留展は、かなりレベルの高い(もちろん私の価値観で)ものであった、と。あの時は現在の自分など全く想像しておらず、個性豊かな作品たちを、もっとじっくり見ておけばよかったと悔やんでいる。
私はアクセサリーらしきものをほとんど身に付けない。常につけるのはピアス・・・それもたいていは小さいスタッドタイプのもので目立たない。手首が出る季節にはブレスレットをつけたりはするが、ネックレスやリング(指輪)は一年を通じてほとんどつけない。
きものを着ることになっても、それは同じだろう。となると、帯留は唯一のアクセサリーとして重要な存在になる。もちろん常に帯留を使うことはないだろう。帯〆は「冠(ゆるぎ)組み」と言われる組み方が一番好きなので、三分紐(帯留に使う細目の紐)は出番は少ないかもしれない。しかし、だからこそ、気に入った帯留をいくつか用意しておきたいと思っている。
ところが、探してみるとこれがなかなかないのである。翡翠やら珊瑚やら象牙やらで作られているやたらと豪華で古くさいものならいくらでもある。だだし、値段はべらぼうに高い。かと思うと、ひどく子どもっぽくて、いかにも安っぽいものもたくさんある。私が手に入れられるくらいの値段で、使いかってがいいものとなると探すのが大変なのだ。
今はあれこれ揃えなければならないので、帯留にはあまり金をかけるわけにはいかない。オオカミもいることだし。ということで、オオカミの十分の一くらいの値段のものを2つだけ、手に入れてみた。値段は安いが安っぽくはみえないと思うし、リーズナブルなものを上手く使うのも腕の見せ所?
両方とも長方形。小さい方はスモーキークォーツで台はシルバー。ヤフオクで手に入れたのだが、中古だし傷のひとつやふたつはあるだろうと思っていたが、ほぼ新品のようだ。スモーキークォーツは好きな石で小さなリングを持っている。
大きめの方は、絹地に日本刺繍が施されているもの。これは今流行の(?)手作りサイト(minnneとかcreemaとか)に作品を出している人のもので、絹糸の上品な光沢が気に入った。モノクロ写真なので色がわからなくて申し訳ないが、紅葉=赤やオレンジ色の常識にとらわれないところが気に入っている。深い緑色の絹(たぶん縮緬)に白練色とでもいうのだろうか、かすかにグレーがかった白で紅葉。アイボリーで小さな葉を3つ。葉柄は細い金糸である。周囲を濃紺で縁取り、全体をすっきり引き締めているあたりは作り手のセンスだろう。
いずれも思いがけず手ごろな値段でゲットできて満足している。そして・・・以前からもくろんでいた、手持ちのボタンを帯留にする計画を実行中。だいぶ前、アンティークのボタンに凝っていた時期があり、使う目的を考えずに気に入ったものを手に入れていたら、かなりの数になってしまった。その中から、帯留にしてもよさそうなものを3つピックアップしてみた。ボタンを生地に留めるシャンクを切り離せるものを選び、帯留用の金具を入手。器用な家人がシャンクを切り離してくれ、接着剤も買ってきてくれたのであとはくっつけるだけ〜
葉のような線が掘られているものは、厚みのある黒蝶貝。その右側は彫金されたフレームに白蝶貝をはめ込んだもの。下は古びて黒っぽくなった真鍮色の金属で6つある花の中心部は少し違う色になっている。大きさは径3センチくらい。今まで何かに使おうと思っていたものの出番がなかったボタンたちに活躍する場ができれば嬉しいと思っている。