・・・小さん師匠に似ていなくもないアンパンマン・・・
系譜というと普通は古い方からの流れということになるのかもしれないが、私はヘソマガリなので・・・というより、昨日「柳家三三独演会」に行ってきたので。
柳家三三さんについては以前も少し書いたことがあったかと思う。興味を持ったきっかけはドキュメンタリー番組「情熱大陸」の動画を見たこと。高校を卒業してすぐに小三治師匠に弟子入りし、若手の中でも注目され続けていた人である。年間430席をこなしたこともあるとのことで(2005年)、芸に対する真摯な姿勢、苦しみながらも淡々とした雰囲気、そして人がやらないものをということで談洲楼燕枝の「嶋鵆沖白波(しまちどりおきつしらなみ)」を三夜連続で演じるという心意気に魅かれた。
三三さんの高座を見るのは二度目だが、本格的な独演会は初めてだった。そのため期待度が高すぎたのかもしれないが、終演後まず感じたのは微かな物足りなさだった。「富久」「堀部安兵衛」の二席だったので、せめて3席は聞かせてもらいたかった。あと、これは人それぞれだと思うが、テンポが速く軽快感があるのだが、私自身が今ひとつついていけなかったようにも感じられた。
しかし、噺のまとめ方はさすがだったし、「堀部安兵衛」といえば忠臣蔵か高田馬場の決闘だと思いきや道場破りに的を絞り込んだあたりなど、やはり曲者なのだろう。圓朝作品もやったことがあるとのことなので、次回はぜひ江戸時代の人情ばなしを聞いてみたいものだ。
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「情熱大陸」にも登場するが、私が現在最も行ってみたい、聞いてみたいのが三三さんの師匠である小三治さん。この方のチケットはなかなかとれそうにないのだが、5月に独演会があるようなのでトライしようと思っている。
小三治さんの落語は動画や音源で親しんでおり、あの飄々とした感じ、すっとぼけた感じ、いつ終わるかわからないけれどおもしろい枕、などとても魅力的な方だと思う。「プロフェッショナル」という番組の動画を先ほど見たが、リウマチを長年患っていらっしゃるとのこと。かなりつらい病気だと思うが、そのつらさを全く感じさせない姿は感動的でさえある。
一件くだけたおもしろい人に見えるが、非常に真面目で物事を深く長く考え続ける人のようだ。師匠である小さんに「おまえの噺はおもしろくない」と言われ、何故おもしろくないのか、おもしろいとはどういうことかを考え続け、「芸は笑わせようとすることではなく、思わず笑ってしまうもの」という信念にたどりついたとのことだ。
1939年12月生まれの小三治さん。御歳78歳である。これからいつでも聞けるやとのんびり構えていていい方ではない。チケット発売日をカレンダーにさっそく書き込み、今からやる気満々(^^;)
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小三治さんの師匠であった柳家小さんさんも映像や音源では何度も見たり聞いたりしている。あの丸い温厚そうな顔はCMでも見たことがあるし、どことなく親しみやすい雰囲気を持った方だった。が、「名人」というとすぐに名前が挙がる三遊亭円生、古今亭志ん生、桂文楽・・・などなどの方々に比べたら、今一つ派手さがないというか「花」がないというか、そんな印象を持っていた。落語を聞き始めのころは。
しかし、それには柳家が滑稽噺を得意としていることも影響しているのではないかと気付き、「人情噺」の方に重きをおきがちなのは初心者だからだろうなぁと思うようになった。滑稽噺の軽やかな面白みは落語の大きな魅力のひとつであり、それを得意とした小さん師匠の芸を弟子である小三治さんが確かに引き継いでいることを思うと、落語界にとって貴重な方だったんだなと実感するのである。iTunesに入っている「狸賽」でも久しぶりに聞いてみるかな。