・・・主手書きの箸袋。いつも持ち帰ってしまう・・・
家人が北海道に一人旅をするようになってからかれこれ8年が経過したことになる。確か旅を始めたのは2008年。前年に胃ガンの手術をし(胃、脾臓、周囲のリンパ節の摘出)、大きな手術を無事に乗り越え生き残った・・・それを確認し実感する旅であるような気がしている。最初はスーパーカブで行っていたが、Volkswagen Type2を手に入れてからは車の旅となった。短くて1週間、長いと2週間近くの旅だが、本拠地を旭川に置くことは毎年恒例になっている。
なにゆえ旭川か・・・北海道の真ん中あたりなのでどこへ行くにも便利といえば便利だが、それにしても・・・と思うこともあるが、たぶんいろいろな言い訳の背後には「独酌 三四郎」があるような気がしている。
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すでに様々なメディアで取り上げられているし、今年はあの「孤独のグルメお正月スペシャル〜真冬の北海道・旭川出張編」に登場した。地元はもとより全国的に名を知られるようになって、昔からの常連さんたちはちょっと残念に思っているのかもしれない。
家人は8年前はじめて旭川に行った時にこの店を見つけた。ネットで見つけたと聞いた記憶があるがすでに定かではない(確認すればわかるが)。その頃は初夏に旅行を計画していて、確か6月に行っていたと思う。風通しのいい店の中で食べた野菜がとてもおいしく、酒ももちろんおいしく、店の雰囲気もいい。以来毎年顔を出すようになっており、私が一緒の時も必ず2人で行く。
最近発行された「旭川昭和ノスタルジー」という本が「福吉カフェ」に置いてあったのでパラパラめくっていたら、「独酌 三四郎」が出ていた。先代が店をやっていたころの写真、現在の写真ともに掲載されていて思わずじっくり読んでしまった。昭和21年創業ということで、“北海道で一番有名な居酒屋”という人もいるようだ。名物は「新子焼き」。井之頭五郎さんも舌鼓をうつ美味しさらしい。
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私は数年に一度くらいしか行くことはできなかったが、寡黙な主(西岡奛さん)と女将(美子さん)の組み合せがステキで、美味しいものを食べたり飲んだりするだけでない特別な店だといえる。特に女将さんがステキな女性で前々から憧れているので今回もお会いできて嬉しかった。
西岡美子さんについては以前にも書いたことがあると思うが、北海道ではじめて利き酒師となり日本酒学講師も務める日本酒のプロである。20年間全国各地の酒蔵を巡り、地元の酒米を使った正真正銘旭川の地酒といえる「風のささやき」をプロデュースした。そんな女将さんが選んだ酒が並ぶのだから、美味しくないわけはない。
女将さんは雰囲気がとてもステキなのである。着物の上に割烹着を着て凛とした雰囲気なのに気さくでおおらかだ。女将さん目当ての常連さんはかなり多いと私はひそかに思っている。前回お会いした時は髪を後ろでまとめていらしたと記憶していたが、今回はショートカットになっていた。毎朝ウォーキングをするとのことなのでラクなのだろう。「髪、切られたんですね」と聞くと「そうなのよぉ。ラクだしねぇ」
2日目に行った時、きりっとしめた前掛けに目が留まった。もしかしたら、と思って聞いてみるとやはり大島だった。お友だちが作ってくれたとのことで地味ながら上品な光沢があり見ただけで上質な大島だとわかる。大島の前掛けなんてなんとも粋ではないか。
女将さんはオシャレな人である。店でしかお会いしたことはないが、絶対にオシャレだと思う。以前行った時に私が巻いていたストールを見て「あらぁ、きれいな赤ね。そういう赤はめったに見かけないわ」と一言嬉しいことをおっしゃる。この度は私が着ていたベスト(ジムフレックスのボアベスト)を見て、「昨日から気になっていたんだけど、そのベストいいわねぇ。どこの?」と聞かれた。ブランド名をいうとすかさずメモ。若い子にネットで探してもらうとのこと。暖かくてデザインも気の利いたベストだと私も気に入っているのでちょっと嬉しかった。
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次に行けるのはいつになるか全くわからないが、まだまだお二人ともお元気なので再会を楽しみにしている。男が男に惚れるということがあるように、女だって女に惚れる。「独酌 三四郎」の女将さんは私がはじめて惚れた女性かもしれない。
*11月も今日で終わり・・・明日から12月かぁ。いやだなぁ。
*わが家はクリスマスなど関係ないし、慌ただしくて世間の世知辛さがいつにも増して感じる月。