昨日はどうしても必要なものがあって蒲田のY屋まで行ってきた。手芸材料を総合的に扱う店としてかなり以前からある店である。このところ行く度に扱う商品数も店舗数も、そして店員もすべて縮小傾向にあるのが明らかに思えて一抹の淋しさを感じる。
はじめて行ったのはいつのことだったか。たぶん小学生のころ、毛糸を買いたい母のお供で行ったのではないかと思う。当時は蒲田の1店舗だけだったと思うが、狭い売場に所狭しと毛糸が積み上げられていたことくらいしか覚えていない。その次に行ったのは20代のころで、その時もまだ1店舗のままだったように記憶している。
人1人がかろうじて通れるくらいの通路を挟んで毛糸が天井近くまで並べられていた。当時は輸入毛糸が今ほど一般的に売られておらず、それを求めて何度か行った。混とんとした売場ではあったが、好みの毛糸を探す楽しみがあり、ワクワクしながら行ったものだった。
それから数十年、店舗は全国展開となりネットショップもオープンした。これは業務が拡大したとも言えるのだろうが、果たして経営的にはどうなのだろうかという疑問は残る。確かに時代が変わり、それまでのやり方では立ち行かなくなる可能性はあっただろう。よりマニアックな専門店が増えたことに加えて、インターネットという強敵が現れたのだから。
かつて蒲田の店は手芸材料ならなんでも揃っているいわば手芸界の百貨店のような存在だった。しかし、昔夢を感じた百貨店が様々な危機を向かえたように、立地に合わせて商品を絞り込みながら店舗数を増やすという戦略をとらざるを得ない危機がY屋にもあったのではないかと推測する。
蒲田には少し前まで1号館から7号館まで(もしかしたらもっと多かったかも)あって、特別用事がなくてもいくつかの店舗を見て歩くのが楽しかった。しかし、今では目的のものを売ってる店舗に行き、それを買ったらすぐに帰る店になってしまった。
実際のところ衰退しているのかどうかはわからない。私が個人的に思いでや思い入れがあった店なので主観的にそう感じているだけなのかもしれない。そして、私自身がどうしてもY屋でなければならない場合だけ利用するようになっており、普段は別の店やネットショップを利用することの方が多いのだから、勝手に衰退などと言っては申し訳ないのかもしれない。
しかし、やはり淋しいのだ。素材との出会いをたいせつにしている身としては、ワクワクすることがなくなってしまったことが。たぶん、そういう気分を求めるならもっと別のところに行かねばならない時代になったということだろう。商売って難しいな、とあらためて思う。