ラグビーの話題が花盛りである。昨日の夕方ラジオを聞いていたら、「ラグビー通、ちょっと前はテニス通」なんていう川柳が披露されていたが、にわかファンの大騒ぎは傍から見ていると少々しらける。自国のチームが奇跡ともいえる(奇跡はないそうだが)勝利を収め、しかも勝ち方がドラマチックだったので仕方ないといえば仕方ないし、わかるような気もするが・・・
スポーツ観戦はほとんどしない私が唯一といっていいほど楽しみにしているのが、自転車ロードレースの世界でいう三大ツールである。
昨年も書いたので細かいことは抜きにするが、最後のブエルタ・デ・エスパーニャも今月半ばで終わり、5月から契約していたJ-SPORTSのオンデマンド契約も解約した。
ジロ・デ・イタリア(通称ジロ)、ツール・ド・フランス(同ツール)、ブエルタ・デ・エスパーニャ(同ブエルタ)はともに21日間を走り続けるレースだ。山あり谷あり、海岸沿いの強風あり、街中の狭い道あり、デコボコの石畳あり・・・選び抜かれた選手たちの誰もが最後まで走れるとは限らない。常にアクシデントと隣り合わせであり、自分の限界との闘いの連続である。良くも悪くもドラマチックであり、一度はまるとなかなか抜け出せない魅力がある。
が、今年は昨年より熱が入らなかった。何故なのか自問自答してみたが、たぶん気に入っている選手の調子が悪かったり素人なりに応援しているチームが勝てなかったりしたことが続いたからだと思う。本当に好きなら、どんなレースでも楽しめるはずなのだがそこはまだまだの私である。
特にツールには熱が入らなかった。昨年とてもおもしろく何度も見直したのとは対照的に、見ないステージがあったり見ても部分的に見るだけにしてしまったりが多かった。それはひとえに、どうしても好きになれない選手の代表であるクリス・フルームが活躍していたからだ。これはごく個人的な好みの問題で、フルームは素晴らしい選手だと思う。強いし、礼儀をわきまえた人だと思う。が、どうしてもあの走る姿がダメなのである。
長身ながら山岳に強く(いわゆるクライマーと言われる山岳を得意とする選手は小柄でほっそりした人が多い)、2012年にツールで2位になってからメキメキ頭角を現した。イギリス人だがケニアのナイロビで生まれ、その後南アフリカに移住して2007年まで選手生活を送っていたようだ。所属するチーム・スカイ(イギリス)は科学的・先進的なトレーニングをすることで有名で、各国チームの中でもちょっと異色な雰囲気がある。
フルームの走行スタイルは、下を向いたままでくねくねしている。それがどうにも私は苦手なのだが、くねくねしながら粘り強く走り、ここはという時にアタックする。こういう選手が本当に強い選手だと言えるのかもしれないと思うが、やはりなんとなくダメなのである。
今年一番見たのはブ エルタだったが、注目していたヴィンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ・プロチーム)がなんと第2ステージで失格となってしまった。ニーバリは昨年のツールで圧倒的な強さを見せて優勝した選手で、私はその勝ち方、走り方が好きなのだがなんとも残念。
集団落車に巻き込まれた後、アシスト選手がなかなか来なかったり代わりの自転車が遅れたりで相当焦っていたようだが、チームカーにつかまってしまうという反則を犯してしまった。ボトルを渡したり監督と話をしたりする時、わずかな時間車につかまるということはよくされているが、今回の場合はつかまったと思ったらチームカーが速度をあげてしまい、あれよあれよと数百メートルつかまったままだったというから、これは罰せられても仕方ないだろう。
ニーバリという選手は(昨年も書いたが)「メッシーナのサメ」というニックネームがあるようにアグレッシブな走りをする人で、私はその走りっぷりが好きなのだが、今回はそれがマイナス方向に向かってしまったようだ。
アスタナというチームはカザフスタンが国を挙げてスポンサードしており、資金面で苦労するチームが多い中で運営はそこそこ安定していると思われる。しかし、今年はツール前にドーピング問題が発覚しライセンス取り消しになるのではないかと囁かれていた。ドーピングが疑われた選手はカザフスタンの選手や研修生で、ツールなどに選ばれる選手ではないのだがチームとしての責任が問われるものなので、私もけっこうハラハラしていた。が、なんとかライセンスを持ち続けられることになり一安心していたのだが、チームは厳しく監視されることになり、それが何らかの形で選手たちに影響しているのではないかと懸念される。
今回のブエルタで、最強とも噂されていたのもアスタナだった。ニーバリだけでなく、ジロで総合3位になったファビオ・アル、アルのアシストだったのに総合2位になったミケル・ランダがおり、エース級3人というメンバーだったからだ。しかし、それは不協和音にもなりうる。
案の定というわけではないが、ニーバリが早々に去った後はトム・デュムラン(チーム・ジャイアント・アルペシン)が予想外に活躍して苦戦。エースのアルも調子がよくないのは冴えた走りをなかなか見せられなくなっていた。
ツールを優勝したフルームも途中でリタイアし、第20ステージまで総合優勝の行方がわからないという珍しいブエルタだった。総合1位のデュムランと2位のアルのタイム差はわずか6秒。それだけでなく、上位5人の間の差が約3分という混戦だった。5人のうち誰が総合優勝になってもおかしくない中、デュムランがまさかの失速、アスタナのチーム力がいい方向に働いて総合優勝はアルの手に渡った。
なんともドラマチックな20ステージだったが、ステージ優勝したルーペン・ブラサ(ランプレ・メリダ)がまたすごかった。35歳のベテラン選手だがツールでもステージ優勝を1度しており、調子がよかったのだろう。残り110キロのところから単独アタックし、結局ゴールまで一人で走り抜いた。各チームの思惑や駆け引きなど関係ないというがごとき快走で、見ていて気持ちよかった。
来年もまた5月のジロから見始めると思うが、その前にいろいろ情報を集めておこうかなとも思っている。その方がより楽しく観戦できるから。ただ、自転車ロードレースは日本ではまだまだ認知度も低く、最新の情報が入りにくい。英語がもっとできればなぁ・・・とぼやきつつ、今から楽しみにしている。