今、デスクの上では淡い紫色のヒヤシンスが強い香りを放っている。最初3本買ってきたのだがなんだか物足りなく、翌日同じものを2本。5本もあると、部屋の中は香りでいっぱい!
昔は一年を通じて花を買っていた。花屋の前を通るたびにチェックし、季節感のある花を中心に選んできた。しかし、ここ数年めっきり花を買うということをしなくなった。懐具合もあるが、欲しいと思う花が少なくなったのである。花屋が変わったというよりも、私の好みが変わった・・・変わったというよりも、より好みが絞り込まれたといったところだろうか。
例外的に花を買うことが多くなるのが、冬から春へ移行する時期。冬好きの私ではあるが、春を感じさせる花を見ると欲しくなることが多い。ヒヤシンスの前はミモザを買った。ミモザにもいろいろあって、一番一般的なのは銀葉アカシアと呼ばれているものだと思う。今年見かけたものはたしか「パールアカシア」というものだと思うが、銀葉アカシアなどのように小さな葉が集まっているタイプ(ネムの木のように)ではなく、丸みを帯びた葉が一枚ずつついている。花は銀葉アカシアとあまり変わらないと思うが、葉のかたちが違うので微妙に雰囲気が違うと思った。
春、しかも早春となると、なんといっても黄色い花だろう。黄色の明るさが生長の季節到来にもっともふさわしいと思う。テータテートという小さなスイセンの黄色も愛らしい。
ヒヤシンスは球根植物の中でも好きな方だ。出回る期間が短いということもあって、白か薄い紫色が出ると買うことが多い。小さな花が集まって咲くという様子に弱いこともあるが、やはり魅力は香りにあるのではないだろうか。強すぎると思う人がいるかもしれないと思うほど強いが、私にとってはあまり気に障る香りではない。
品種もいろいろあるようで、小さな花がみっしり重たそうについているものも見かける。たまに、どこぞの庭先で植えっぱなしにしたと思われるヒヤシンスが花数少なく楚々と咲いているのを見かけるが、原種に近い品種にはそういうものもあるらしい
ので、放置状態とは限らないと知った。
ヒヤシンスは中東原産で、もともとは青紫色の花を数輪咲かせるものだったらしい。園芸大国オランダで品種改良されたダッチ・ヒヤシンスと、フランスなどで改良されたローマン・ヒヤシンスの2系統があったようだが、花数の多いダッチ系が主流となりローマン系はすたれたという。しかし、原種に近いローマン系は香りが強く野趣に富むため見直されつつあるという話もあり、私としては多いに見直して市場に出回るようにしてほしい。
より大きい花を、より多くの花を・・・というのが品種改良のメインストリームになっているのは否めない。そういったものを求める人が多いのだろう。が、昔からの品種や原種もたいせつに残してほしいと思う。私のようにそういったものを好む人たちも一定数いると思うし。
ヒヤシンスという名前は、ギリシア神話に出てくる美少年ヒュアキントスに由来するという。アポロンとヒュアキントスの仲に嫉妬したゼピュロスが風を起こしてアポロンが投げた円盤をヒュアキントスに当て、額に円盤を受けたヒュアキントスは死んでしまった。大量に流れた血から生まれたのがヒヤシンス。それゆえか、花言葉は「悲しみを超えた愛」だとか。
名前の由来を知ったからではなく、ヒヤシンスは紫色が最もヒヤシンスらしいような気がする。濃い紫色なら原種に近いものの方がしっくりくるが、目の前にあるような淡い色ならオランダ系のものもなかなかいい。しばらくの間、部屋の中を漂う香りを楽しみたいと思う。
*花の色は、「木と草と花と・・・」で。