先週の土曜日、「DEDICATED〜2014 OTHERS」を観に行ってきた。首藤康之、中村恩恵、りょう、の3人による緊張感溢れるステージだった。
2011年にスタートした「DEDICATED」の今年のテーマは「OTHERS」、すなわち「他者」である。2作品のうち首藤康之が一人で演じる「Jekyll & Hyde(ジキルとハイド)」は、鏡が重要な役割を持つ作品。鏡に映る自分の中にいくつもの「他者」を見る、ということだろうか。天井からつり下げられた大きな鏡をダイナミックに動かしながら踊る首藤の肉体に緊張感が溢れていた。
もうひとつの作品「出口なし」は首藤、中村、りょうの3人が「鏡のない部屋」に閉じこめられているという状況設定。原作はサルトルの「出口なし」で、若いころ私も一度読んだことがあるはずなのだが全く覚えていなかった(^^;) こちらは、「他者」の中に見たくない、知りたくない「自分」を見る・・・とでもいおうか。つま「Jekyll&Hyde」では「自己の中の他者」を、「出口なし」では「他者の中の自己」を表現しており、この2作品は対の関係にあるといっていいだろう。
時折使われる効果音、BGMの他は静寂そのもので(「出口なし」は台詞があるが)、会場は「水を打った」という表現がぴったりするくらい静まりかえり、観客の目はステージに釘付けになっていた。隣の席の息遣いさえ聞えてきそうな濃密な時間を過ごしてきた。バレエのチケットは、私にとっては高額なのでいつも少し迷うが、やはり行ってよかったと思う。
それにしても首藤康之というダンサーは、青い炎のようなエネルギーを内に秘めた希有のダンサーだとあらためて思った。映画「今日と明日の間で」では、非常にストイックではあるがどこかで見かけそうな男の顔も見せているが、ステージに上がった時の迫力にはすごいものがある。才能豊かな人というのはそういうものなのだろう。
終演後、会場に設けられた参考図書コーナー(?)をなにげなく見ていたら、古いバレエ雑誌があって操上和美撮影が撮影した写真が何枚か掲載されていた。強烈なインパクトのある写真群に圧倒され、帰宅後探してみたら「POSSESSION」という1997年発行の写真集であることが判明。中古で販売されていたので入手した。
撮影対象である首藤康之が25か26歳の時の写真だと思われるが、とにかくすごい肉体である。研ぎ澄まされたというかそぎ落とされたというか・・・とくに足のアップには驚いた。機会があったらこの写真集についても書いてみたい。
それにしても(2度目!)、「DEDICATED」(=身を捧げた、打ち込んだ)といい「POSSESSION」(所有、専有)といい極端な一途さを感じさせるタイトルが首藤にはよく似あう。「POSSESSION」には「悪魔に取りつかれた」という意味もあるけれど。