「童心に返って」という言葉をよく聞くが、実際のところ本当に子供の自分の気持ちに返ることはさほど多くないのではないかと思う。きっとそんな時は何かに夢中で、後になって「いやぁ久しぶりに子供に戻ったようだった」と思う・・・そんな経験はなかなかあるようでいて、なかなかない。
今日も風が強いが、昨日はもっと強烈だったように感じた。自宅付近はさほどではなかったが、職場の敷地内に入ったら前に進むのも難しいほどの風。思わず去年9月の台風時を思い出したが、向かい風だったのでまだよかった。強烈な追い風というのは背中を押すだけでなく、足を掬うのだ。
仕事場は横浜の中でも風が強いと思われる沿岸エリア。地上でも当惑するほどの風なのだから屋上はもっとすごいだろう・・・ということになり、昼休みが終わる間際みんなで屋上に向かった。
みなさん、私よりだいぶ年下の元気な方々である。面白半分に行き、渦巻くような強風を体験していた。私は去年のことがあるので一人出入り口付近に留まり、みんなが風に玩ばれているところを見学。
髪が風にあおられて舞い上がり、身体全体が流され、行きたい方向になかなか行けず、写真を撮ろうとしても手元が定まらず、大切なものを落として必死で追いかけ(^.^;)・・・そうこうしているみんなはまるで子供で、一人観察者を決め込んだ私はその光景にみとれて写真を撮るのを忘れてしまった。
人間を心底子供のようにするのは、人間が作ったものによってではなく、自然現象なのではないかとふと思う。あの時、あの場所にいた人たちは仕事のことなど全く考えていなかったに違いない。
仕事以外のいろいろもろもろ抱えているものも、一切忘れて風を楽しんで!?いたに違いない。いずれにしろ、みんなとてもいい顔をしていたことだけは間違いない。
そういった時間を共有できなかったことは残念といえば残念だが、その職場において私は常に傍観者であり観察者でもあるようなスタンスでいるため、あえてみなに加わろうという気持ちにはなれなかった。でも、見ているだけで半分くらいはあの風を共に感じたと思っている。
そういえば、私が高校生だったか大学生だったかのころ、大雪が降って夜半に止んだ。何を思ったかは思い出せないが、私は父と母を誘って夜の散歩に出かけた。大雪といったって横浜の大雪である。
たいしたことはないのだが、あたり一面真っ白になった雪の中を3人で歩いた。たくさん積もっているところを選んでざくざくと足跡をつけたり、小走りで走って「ラッセル車!」などとはしゃいだ。
父は笑いながら黙って歩いていたが、雪の中を歩き雪を踏みしめながら、子供時代を思い出していたのかもしれない。北海道の雪とは較べようもないが、若いころこちらに出てきめったに帰ることがなかった故郷の雪を思いだし、少しだけ子供に戻っていたのかもしれない。今にしてそんなことを思う。