2007.07.31 Tuesday
山川方夫の孤独と絶望
先に取り上げた「夏の葬列」。9つの作品からなる短編集であると書いたが、正確には7つのショート・ショートと2つの小説からなる作品集と言った方がよかったと今になって思う。
ショート・ショートは短編というよりも「超短編」といった方がいいような大変短い形式で、「はてなダイアリー」によればその定義は(1)新鮮なアイデア(2)完全
なプロット(3)意外な結末、だそうだ。
この作品集に収録されている9つの作品のうち、7作品は意外な結末が鮮やかに示される典型的なショート・ショートで、テーマが明るい話題ではなくてもどこか軽妙さを感じる。が、最後の2作品「煙突」「海岸公園」は全く趣が違い、どちらかというと重く切迫感が漂う作品となっている。
今回一通り読み終えて、なんとなく気にかかるものがあって最後の2作品のみすぐに再読してみた。やはり重く、どこか切羽詰まったものが充満しており、やがてそれは乾いた絶望に帰結しているような印象を受けた。その雰囲気に同調するものを私はたぶんかかえているのかもしれない。以前何度か読んだ時には感じなかった愛着を、この2作品に感じた。
山川方夫は日本画家である山川嘉雄(雅号・秀峰)を父に、京都の染物問屋の長女であった綾子を母に生まれ、姉二人、妹二人。つまり長男であり一人息子である。書生4人、女中4人をかかえる裕福な家庭で育った。慶応義塾の幼稚舎に入り以降大学までずっと慶応。いかにも良家の子息である。が、その裕福な暮らしも山川が14歳の時に父が急死してから一転し、徐々に没落していく家の主としての重荷を負い続けた。
その重荷が何であるか、一人で背負う孤独がどんなものであるか・・・山川は周囲の人たちに決して語ろうとはしなかったらしいが、「煙突」「海岸公園」には色濃く投影されていると思う。山川が三田文学編集長の時に発掘したといっていい江藤淳が「山川方夫のこと」という文章の中で以下のように書いているという(「夏の葬列」解説より)
彼は、表面的にはきわめて社交的な男だったが、その実いつもいまにも爆発しそうなさまざまな苦しみをかかえて、懸命に生きていた。その孤独な、孤立無援な耐え方が私は好きだった。
解説を書いているのは山崎行太郎という人。どんな人か知らないのだが、この解説も読み応えがある。解説のタイトルは「陽気な絶望者」で、山崎は山川方夫の文学の根底には深く絶望した不幸な人間がいる、と書いている。
今年はなぜか、その「深く絶望した人間」山川方夫に惹かれる。あまり有名な作家ではないが、一部に熱烈なファンがいる、といったタイプの作家ではないかと思う。他の作品を探して読んでみたい。
*今日の撮影は意外と早く終わり午後2時過ぎにスタジオを出た。
*銀座の本屋に寄り、ゆっくり帰宅。
*ビールを飲んだらネムネムに。4時半に目覚めてしまったからかな。
*で、ちょいと昼寝ならぬ夕寝をしてしまった。
*探していた本はなかったが、久しぶりにArneを2冊購入(1冊はバックナンバー)
*それと、前々から気になっていた「あなたのために」(辰巳芳子)
*実際作るかどうかはわからないが、スープが好きなので。
*アップルからはまだ連絡なし。明日こちらから電話してみるかー
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