2007.03.29 Thursday
エディ藩という男
・・・ヘッドライトを迎え撃つ。そんな気分の夜もいい・・・
22日に山手の外人墓地に行ったことをこのブログに書いて以来、何故か心の中に重苦しいものを感じつづけていた。自分で撮った倒れた十字架の写真を見ると、憂鬱というよりもどこか暗い罪を背負ってしまったような、見てはいけない闇をのぞきこんでしまったような、そんな感じ。
静かに眠る人たちの上をずかずかと歩き回ってしまったことに対する罪悪感なのか。それとも、そうまでして写真を撮ったことに対する罪悪感なのか。あるいは墓の存在そのものに対する罪悪感なのか。なかなか直らない頭痛が重苦しさをさらに強め、春めいてきたというのに冴えない私なのであった。
ここ数日は体調もまあまあで、桜に気を取られていたこともあり、気分は少し軽くなってきたように思う。そんなところに、頼んであった「天使はブルースを歌う」(山崎洋子・毎日新聞社)が届いた。この本は、山手の外人墓地について調べていた時に知った本で、墓地に眠る子供たちを歌った「丘の上のエンジェル」について書かれているとのこと。情報はそれだけだったが、迷わず注文した。
仕事を早めに終えて散歩にでも行こうかと思ったが、本のことがなんとなく気になって読みはじめた。まだ途中なので全体についての感想は後日に回すが、「丘の上のエンジェル」という歌について詳しいことがわかっただけでも大きな収穫だと思っている。
この歌は、当時YCAC(ヨコハマ・カントリー・アスレチック・クラブ)の総支配人であった依田成史氏と元町のフレンチレストラン霧笛楼のオーナーである鈴木信晴氏がエディ藩に作曲を依頼、エディ藩がこの本の作者である山崎さんに作詞を依頼してできた曲。作曲がなんとエディ藩!私は俄然嬉しくなった。
ご存知の方も多いと思うが、エディ藩はゴールデンカップスのリードギタリストだった人で、有名な「横浜ホンキートンク・ブルース」の作者でもある。この曲は俳優の藤竜也が作詞をしたことでも有名で、原田芳雄、松田優作なども歌っている。私は原田芳雄の歌がとても好きだったのだが、去年「ワンモア・タイム」というCDとDVDで作者本人が歌うのを聞いて、さすがに洗練されていると思ったものだ。
DVDの中でエディ藩はエネルギッシュにギターを弾き、歌っていた。ゴールデンカップスが解散して久しいが。音楽活動は続けていることがわかる演奏だった。ステージでイキイキとした表情を見せるエディ藩から、私はけっこう陽気な性格の人間を連想していたのだが、今回「天使はブルースを歌う」を読みはじめて、その連想が間違っているかもしれないと思いはじめている。
作者の山崎さんはある日自分の作品を評論家・平岡正明氏に見せる。すると氏は「ブルースが足りないね」とさらりと言ったという。そして「ブルースはエディ・バンだな」と。
以来山崎さんはエディ藩のライブハウス「ストーミー・マンデー」に通い、彼のライブを見るようになり、歌の作詞まで頼まれるようになるのだが、エディ藩はどちらかというとぶっきらぼうで無愛想な男であり、距離感をずっと感じさせる人間であるようなのだ。中華街の老舗の跡を継いだものの実質的には母親が経営しており、彼はレジから金をつかみ取るとギャンブルをしに行く。
山崎さんに「職業は?」と聞かれると「ギャンブラーだよね」と答える。が、それは居直っているわけでも諦めているわけでもなく、「ミュージシャン」と呼ばれるだけの力が現在の自分にはないことをきちんと把握しているからこそ言えることであるような気がする。
「丘の上のエンジェル」の録音の際、エディ藩は曲に歌詞を上手く乗せられずなかなか歌いこなせなかったという。ディレクターである中村裕介氏は山崎さんに一部の歌詞を返るように依頼した。山崎さんはプロの作家だが作詞家ではない。しかしエディ藩が歌えない以上直すしかないか・・・そう思い歌詞を見ていた時、彼は言った。そんなに簡単に妥協しなくていい、歌えないのは俺の責任なんだから、と。エディ藩とはそんな男らしい。なかなか魅力的な男だと思う。
*まだるっこしいので一部敬称略(ペコリ)
*久し振りに「横浜ホンキートンク・ブルース」を数回立て続けに聴いた。
*松田優作のより、エディ藩のほうがやっぱりいいな。
*実は一番はじめに聴いたのは原田芳雄バージョン。
*これがまたいいので、聴きたいと思っていたがCDがない・・・はずだった。
*以前調べたことがあったのだ。が、再度amazonで調べるとベストアルバムが!
*去年出たらしい。やっほー!
*もちろん、ポチッとな!(^_^) ついでにエディ藩の「ブルー・ジェイド」も。
*今日は午後から元義父・義母が眠る墓に行ってきた。すぐ近くなのだ。
*先日楓の写真を撮りに寺に立ち寄った時、墓を見に行ったのだが・・・
*彼岸直後なのに花が全く供えられていなかった。淋しくなってしまったので。
*元義父・義母には複雑な思いがあるが、出会ったということは縁があったと。
*さて、明日はまた千葉だ!
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