少し前、友人が「たばこと塩の博物館」に行くというのでミュージアムショップで販売されているマッチの購入をお願いした。本当は私も行きたかったのだが都合がつかず残念。博物館が渋谷にあった時もいつか行こうとは思っていたのだが、地味な企画展が多かったこともあり行かずじまいになってしまった。
先日友人から頼んでいたマッチを受け取った。どうです?なかなかかわいいでしょう?「たばこと塩の博物館」オリジナル商品の「たばしおマッチ」である。女の子は「たばこ」、男の子は「としお」という名前で、裏表になっている。赤い♡に灯がついて、「たばこ」の絵には“としおに燃え”、「としお」には“たばこに燃え”と書かれている。中のマッチにも顔が描かれており、ちょっと使う気になれないかわいらしさだ。
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マッチはかつて家庭になくてはならないものだった。台所のコンロに火をつけるにも、ストーブをつけるにもマッチが必要だった。たばこを吸う時だって、今のような使い捨てライターがなかった時代はマッチはぜひとも必要なものだった。しかし、今は何でも自動化されおり、マッチの出番は極端に少なくなってしまった。
子どものころ、私はマッチを擦るのが怖かった。母が近くの会社にパートに出ていたので、自分でやかんの湯を沸かしたりストーブをつけたりしなければならなかったのだが、あの細い軸を擦ると一瞬にしてあがるほのおが怖かった。やけどをしそうに思えたのだ。
しかし、火をつけられるようにならなければ自分が困る。そこで最初はフォークのすき間に軸をはさんで擦るという無謀な試みをした。フォークにはさんだマッチは不安定で力が入らない。火が出るどころではなく、すぐに落ちてしまった。そこで勇気を奮い起こして(!)、流しの上でこわごわマッチを擦る練習をした。何度かやっているうちにコツがわかり、めでたくマッチを擦ることができるようになりましたとさ!
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そういった時期を過ぎて、何を思ったのか中学校3年生の時にマッチを収集しはじめた。一番仲がよかった友だちが集めはじめていたので私も!ということだったのかもしれない。中学生だから喫茶店に入ることもほとんどなく、ましてやたばこを吸うこともなかったのに、マッチはけっこう集まっていた。レストランや食堂などにはたいていマッチが置いてあったし、飲食店でなくてもマッチを見かけることが珍しくない時代だったからかもしれない。
集めたマッチを大きめの箱(たしか、ウールのコートを買った時の百貨店の箱)に入れて保存しており、時々友だちと集めたマッチを見せ合い、複数あるものは交換したりしていた。当時はまだ箱型のマッチが多く、店によっては凝ったデザインのものもあって見ているだけで楽しかったと記憶する。
それらのマッチも今はない。いつ処分したかとんと覚えていないのだが、実家を出た時だったかもしれない。もう二度と実家に帰ってくることはないだろうと覚悟していたので、できるだけ残すものは少なくする必要があったから。大きいとはいえ箱ひとつ、残しておけばよかったと今後悔しても遅すぎる。
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今あらためてマッチを擦ってみると、いいものだなぁと思う。マッチを擦る動作も、はかなく消える火も、なんだかとても味わい深い。今ではかなり数は少なくなってしまったが、オリジナルのマッチを作り店においているところもあるかと思う。そういうところのマッチを少しずつ集めてみようか、と思っているところだ。
*このマッチ以外にも、「こけしマッチ」「ひよこマッチ」もいただいた。
*どれもこれもかわいいぞー
*今やっている企画展に興味あり。来月あたり行こうかな。