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日々の内側
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手島圭三郎さんの版画

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以前にもちょっと触れたが、先日行った古本市で一目ぼれした絵本がある。「しまふくろうのみずうみ」だ。作者は手島圭三郎さんという版画家で、この作品は絵本としてはデビュー作のようだ。立ったままページをめくる度に、木版画の素晴らしさを教えてくれるような気さえして迷わず購入した。

フクロウやミミズクは鳥類の中でも特別好きな鳥だ。ワシ、タカなど猛禽類の仲間なので、鋭い爪を持つ肉食の鳥である。昨今はフクロウカフェなどができ、ネットでペットとして飼っているフクロウの動画を公開している人がいるので、“かわいい”というイメージも持っている人も多いのではないだろうか。しかし、見た目はかわいくても、昼間は眠そうにぼんやりしていても、夜になれば獰猛なハンターになるのだ。

ひとたび翼を広げたら、予想以上にそれが大きく力強いことに驚くだろう。あの大きな翼で空を巡る様子を想像するだけで、本来であれば雄大な自然の中が一番似合う鳥なのだと思う。フクロウカフェで見るような鳥ではない。

「しまふくろうのみずうみ」には、北の大地で暮すシマフクロウの親子の様子が描かれている。静かな夜、3羽は湖の近くにやってきて夜のしじまを見つめる。雛鳥は空腹でたまらない。父鳥が飛び立つ。母鳥は雛と一緒にじっと待つ。長い間待ち続け、漸く父が帰ってきて餌を雛に与える。大きな魚だ。父と母は交代で魚を獲りにいき、夜明け前に3羽は湖をあとにする。残ったのはしんと静まった湖だけ・・・そんな話だ。

シマフクロウの親子の一夜にすぎないのだが、場面場面の絵がすばらしくて見とれてしまった。大きな翼を広げて飛び立つ父鳥の姿は圧巻である。鋭い目、嘴、たくましい足と爪・・・フクロウは強くて美しい鳥だとあらためて感じさせてもらった。

表紙にタイトルが印刷されているが、その文字もおそらく木版である。この本は絵のみならず文章も手島さんがてがけており、なかなか味わい深い。

手島さんのプロフィールを拝見すると、1935年北海道紋別市生まれ、とある。北海道学芸大学区を出た後、中学校で20年教員生活を送り木版画家として独立されたようだ。生まれも育ちも北海道ということで、アイヌの伝説などに触れる機会も多かったと思われる。

北海道に生きる動物たちを扱った作品が多く(ほとんどかもしれない)、これもまた先日買った「チピヤク カムイ」などはそれに当る。「チピヤク」はオオシギのことで、アイヌの人たちはその名に“カムイ(=神)”を付けて呼ぶこともあるらしい。

神々の使いとして地上に降りてきたオオシギ(オオシギの姿をした神)が、あまりに地上がすばらしくて帰りがとても遅れてしまい、神々の怒りを買って地上の落とされてしまう。オオシギは北の大地を巡る季節の中で傷を癒し元気になったが、するとまた神々のいる天上が恋しくなる。もどろうとするが、途中で神々の激しい怒りを思いだして地上に戻る。また天上に行きたくなる。しかし、やはりあきらめる・・・

オオシギは4月下旬にオーストラリア南部から北海道、東北地方に飛来し、子育てを終えると秋にはまたオーストラリアに向けて飛び立ち越冬する鳥、だそうな。空の一点から急降下する時は尾羽の一部を張りだし、すさまじい音を立てるという。アイヌの人々は、雷さまと音を競っているものと考え、それだけの力がある鳥を崇める気持ちをもっていたらしい。

この本は四宅ヤエさんという方の語りを藤村久和さんという方が文章化したようで、アイヌの物語のひとつがベースになっているものと思われる。絵は、シマフクロウのダイナミックさとは違うが、オオシギのスピーディーな飛来がよく感じ取れるもので、背景に描かれている北海道の自然も美しい。

木版画は版画の中でも好きな手法で、ぬくもり感のある持ち味は見ていてここちよい。これから少しずつ、手島さんの作品を見たり読んだりしていきたいと思う。シマフクロウの版画があったら欲しいくらいだ。

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