CALENDAR
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< May 2017 >>
SELECTED ENTRIES
RECENT COMMENTS
ARCHIVES
MOBILE
qrcode
LINKS
PROFILE
OTHERS

Interior

日々の内側
copyright sumigon all rights reserved
罪の香、ふたたび

17-0509.jpg

昨日は11時くらいに家を出て帰宅したのが18時過ぎ。真夏並の陽気も手伝って、かなり疲れてしまった。できるだけ簡素に、と生前の伯母が書き残していた通り親類だけ10人で静かに見送った。直葬というのだろうか、通夜・葬儀らしいものはせず斎場から寺へ行き納骨まで済ませるかたちをとった。棺の中の伯母は病院で見た時よりもさらに小さくなっていた感じだったが、花に囲まれて穏やかな顔をしていた。97年も生きるというのはどういうことなのか、私にはまだまだ分からない。が、漸く訪れた死に伯母はほっとしているのだと思いたい。

待ち時間がけっこうあったので、故人を偲ぶ意味もあって伯母の話がいろいろ出た。兄弟姉妹で来ていたのは今年90才になった伯父だけだったが、たいへん元気な人で誰よりもよくしゃべっていた。しかし、その伯父でさえ、9年前に私が伯母から聞いた話はほとんど知らなかったようだ。男だからというのもあるだろう。姉妹だったらもっとよく知っていたかもしれないとは思うが、末の妹である私の母はほとんど知らなかった。たぶん伯母は最小限の人にしか自分の過去は語らなかったのだろう。その中にいれてくれたことを今さらながら感謝したいと思う。

昨日帰宅してぼんやり伯母のことを考えていた。ふと気づいて本棚に置いたままになっている古びた小さな箱を取り出し、中に収まっている小さな瓶を手に取った。古い香水である。名前は「MY SIN」。この「我が罪」という名の香水を私が10代のころから探していたこと、伯母のところに行った帰り際ふと手渡されて驚いたこと、などは2008年6月7日の記事で書いている。

あらためて、伯母がこの香水を箱が古びるまでたいせつに持ち続けていたことを考えていた。いつごろ手に入れたのだろうか。自分で買ったのだろうかそれとももらったのだろうか。老境に入ってからは使うこともなかったと思うのに何故持ち続けていたのだろうか。何故この香水なのだろうか。有名な香水はいくらでもあったと思うのに。そして何故この香水を私にくれたのだろうか・・・

9年前は、なにか因縁めいたものを感じただけでそれ以上考えようともしなかったし、伯母に聞いたりもしなかった。なにか理由があるような気がしたが、聞いても伯母は言わなかったであろうし、それがわかっているのならそれ以上詮索するのはよくないと思っていた。今でも同じように考えているが、伯母がこの世からいなくなってみると、なぜかまた気になってくるのだった。

伯母の人生は決して平坦なものではなかった。60才で離婚してから37年間は比較的穏やかだったように見えるが、何がしかの鬱屈や悲しい出来事はあったに違いないと思う。私から見れば周囲にきめ細かい気遣いをし、でしゃばることなく穏やかな人に見えたが、誰にも踏み込むことを許さない頑固さもまたあった。

いつだったか伯母は自分自身のことについて「わがままなことばかりやってきた」と言ったことがある。私にはとてもそうは思えず、伯母の謙遜だとその時は思った。が、今思えば伯母という人はできるだけ自分に正直に生きようとしてきたのかもしれない。苦難はいくつもあった。それを乗り越えながら自分らしく生きたかった。そのためには、親兄弟をはじめ周囲の人々を傷つけてきたこともあり、伯母はそれを十分認識していたのではないだろうか。

「したいことをしてきたと人は思っているけど 心の翳は誰にもわかるものじゃないから」

ふと、ユーミンの「さみしさのゆくえ」を思い起こした。ユーミンの曲の中でも特に好きな曲のひとつである。なぜ好きなのかははっきりしている。強いシンパシーを感じるからだ。何故なら私自身が母親や妹から「自分勝手」「好き勝手に生きている」と常に言われ続けてきたからだ。なるほどそうかもしれないと思い、そうかもしれないけれど、楽な道のりではなかったのだと思い、その間に私が犠牲にしてきたことや失ってきたもののことは誰にもわからないと思うからだ。

伯母は自分が数々の「罪」を犯してきたと思っていたのかもしれない。もちろん法律的な「罪」ではなく、道徳的・倫理的な「罪」を。だからこそ、「罪」という名前の香水を処分せず持ち続けていたのかも・・・もしかしたら全く別の理由(たとえば、今でも忘れ難い人からもらった、たとえば単に処分しわすれていた、等々)かもしれないが、私にはなんとなくそんな気がしている。

そしてその香水を手渡された私もまた、数々の「罪」を犯して今に至っている。その香水にふさわしい人から、ふわさしい私が受け取ったのだ。古いものなので変質しているかもしれない。使うことはないと思うが、時々出してきて瓶の蓋を開け、香りを嗅いでいきたいと思う。

| - | 18:37 | comments(2) | - |
SPONSORED LINKS